天笠啓祐
食用スウィートコーン認可される
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会は、3月21日に、トウモロコシとしては初めて食用のスウィートコーンを認可した。これまではすべて飼料用のデントコーンだった。
4月1日から法的規制が始まる、その直前の駆け込み認可である。このトウモロコシは、ノバルティスシード社が開発した殺虫性のコーンで、輸入だけでなく、国内作付けをにらんだものであり、輸入食品や国内産トウモロコシに遺伝子組み換えトウモロコシが増える危険性が強まった。
ヨーロッパで広がる「組み換え飼料」拒否
ヨーロッパを襲った狂牛病の衝撃は、大きかった。その狂牛病が引き金になり、飼料原料を、動物性から植物性に切り換える動きが加速している。その結果、ヨーロッパでの畜産飼料の中で組み換え作物の割合は相対的に高まる傾向が見られた。そのことが、消費者に新しい不安をもたらした。
消費者の意向を反映させた形で、イギリスのスーパーの大手、アスダとテスコが、飼料への組み換え作物使用中止を要請した。そのことが、きっかけになって、今度は組み換え飼料拒否の動きが加速し始め、全ヨーロッパに波及しつつある。
これまで食品にとどまっていた遺伝子組み換え作物拒否の流れが、飼料にまで波及したことになる。日本ではまだ、飼料に関しては運動が弱いが、「花」や「樹木」と同様、積極的に取り組むべき課題である。
広がるバイオ産業
バイオ産業はいま、医薬品メーカーや化学メーカーがつくり上げてきたバイオ産業と、情報産業とが連携しながら急速に拡大しつつある。ヒトゲノムやイネゲノムなどのゲノム解析が進み、解読されてきたDNAが、IT革命と相携える形で、特殊な分野から脱皮し、一大産業分野を築こうとしている。
その中で目立つのが、バイオ企業とIT関連企業の連携である。三月五日、富士通と三菱化学が、提携することを発表した。バイオ大手とIT大手が、本格的な協力関係をもった。ゲノム解析やゲノム創薬で連携して開発に当たるのが目的である。
すでに日立製作所と味の素とが、提携を発表している。第一製薬は富士通系のベンチャー企業とゲノム創薬で提携することを決めている。ゲノム情報を解析したり、産業に応用していくために、いまやバイオとITの協力が不可欠になっている。
DNAの塩基配列は、ヒトゲノムの場合、三〇億文字から成り立っている。この文字が複雑に絡み合って生命現象が成り立っている。この文字数は、IT産業にとってみれば、パソコン一台に収まる数でしかない。もちろん、その情報量から生命現象を読み取ることは、至難ではある。しかし、バイオ企業にとっては大変な数字でも、IT企業にとっては、とくに大変な数字ではない。
これまで進められてきた、ヒトゲノム解析では、遺伝子としての役割まで分かった部分は少なく、文字配列であるDNAの塩基配列を読み取っただけといっても過言ではない。これから本格的に遺伝子としての機能解析に入っていく。その時、有効性を発揮するのが、ITである。
私たちにとってみると、ますます「生命を単なる記号として」扱う傾向が加速することになる。このような分野をバイオインフォマテッイクスという。このバイオインフォマテッイクス分野の競争を制する企業が、他の企業を制して先行することができる、というのが現在の新しい流れである。
バイオ産業の中軸を担っていたメーカーに、こうして製薬企業と化学企業のほかにIT関連企業が入ってきたのである。例えば、日本では、そのほかにもNECがバイオビジネスへの参入を打ち出し、バイオIT推進事業室を設置している。米IBMも、バイオビジネスをIT戦略の柱と位置づける宣言を行っている。
そしてポスト・ゲノム解析として登場しつつあるのが、「蛋白質解析」である。ゲノム解析と異なり、蛋白質は、医薬品や食品として用いることができる。すなわちメーカーにとって、蛋白質を探したり、設計することは、直接ビジネスに結びつくのである。
しかも、遺伝子から見ていったのでは、医薬品や食品開発に結びつくまでに、とてつもなく長い期間がかかってしまう。蛋白質から見ていったほうが開発に結びつきやすい。例えば、遺伝子が発現して蛋白質をつくる方ではなく、蛋白質を分解する方に焦点を当てていけば、病気の治療と直結して開発が可能である。がん、免疫、炎症、脳神経疾患など、ほとんどの病気で、蛋白分解の異状がキイになっているからである。
すでに蛋白質をにらんで動き出している企業も増えている。米大手コンピュータ・メーカーのコンパック社は、セレーラ・ジェノミックス社、米国立サンディア研究所と蛋白質解析のためのスーパーコンピュータの開発を発表している。
日本の大手製薬メーカーも提携したり、独自に蛋白質解析に乗り出している。三菱化学・NEC・富士通は、北里大学が開発したソフトウェアを用いて、約二万五〇〇〇種の蛋白質の立体構造予測を完了させている。持田製薬は、理化学研究所と蛋白質の共同研究を開始した。国家予算も、バイオインフォマティクスと蛋白質関連に多額の配分を行っている。これからはITを用いた蛋白質解析や設計が競争の主軸になることが示されている。こちらの方の監視も怠りなく行っていく必要がある。
4月1日、表示は始まったが
4月1日に「遺伝子組み換え食品の表示」が正式に始まった。始まったとはいっても、スーパーなどに買物に行った人たちの大半が、従来とほとんど変わっていない、という印象を抱いていることが報道された。大半の食品が表示されない状態で流通しているからである。また、メーカーが非組み換え原料の確保に努力してきた点もあるが、表示の対象外が多すぎ、混入率も高く設定されるなど、さまざまな欠陥があり、これでは何のための表示かということになる。
安全性評価に関しても、従来の指針の内容がそのまま法律に変わったにすぎず、「実質的同等」という、とても安全性評価の基本にならない原則がいまだに用いられている点、これまた、とても消費者の不信感は決して払拭されていない。
これからの活動として、全食品に表示を求める運動をさらに進めていくことが大切である。さらには、今回は表示の対象にならなかった、家畜の飼料、種子、肥料、アルコール飲料などの表示も求めていく必要がある。
安全性評価に関しては、環境への影響、食品としての安全性に関するより厳しい規制を求めていくとともに、4月1日に施行された情報公開法を最大限利用して、審査中の作物の安全性評価に関する審議資料等の公開を求める運動も行う必要がある。

|