| なぜコーデックス委員会なのか? 天笠 啓祐
WTO(世界貿易機関)が設立されるとともに、私たちが毎日食べる食糧・農業の世界が大きく変わった。具体的に見ても、遺伝子組み換え食品が流入し、輸入食品が増大し、狂牛病や口蹄疫のような畜産農家への脅威が広がった。
なぜWTOが、このような食品の安全性に脅威をもたらしてきたのか。それは、世界統一化、グローバリゼーションという考え方にある。WTO設立の際に合意された協定の中の、「農業協定」と「衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定と呼ばれる)」が問題であることは、当初から指摘されていた。
農業協定は、「例外なき関税化」と呼ばれた、農産物貿易の自由化促進を謳ったものであり、日本ではコメの自由化を始め、遺伝子組み換え食品の流入、野菜や畜産物などが、外国から次々と入ってくる要因となった。ヨーロッパでは、この農業協定によって、狂牛病・口蹄疫が一挙に拡大するなどの矛盾が噴出した。
もう一つのSPS協定は、世界の食品規格を国際的に統一化するよう義務づけたものである。国際的ハーモナイゼーションといわれるものである。それまで、各国の自主的な判断で行われてきた安全性や表示なども国際統一化を義務づけ、その結果、厳しい規制をとってきた国の場合、大幅緩和を強いられることになった。その内容は、各国の主権に制限をもたらすものですらある。
しかもこのSPS協定では、食品の安全性などの規格に関して、コーデックス委員会が決めた基準に合わせることを義務づけたのである。コーデックス委員会とは、FAOとWHOの下に置かれている合同食品規格委員会で、従来は、拘束力をもたない緩やかな組織だった。それがWTO成立とともに、各国の主権に制限をもたらすことができる、権力をもった機関へと変わった。
遺伝子組み換え食品をめぐって、世界の消費者が動いたため、推進国の米国・カナダを除いて、ほとんどの先進国が表示を行うことになった。また、当初OECD(経済協力開発機構)によって打ち出された安全性評価の原則である「実質的同等性」の考え方の見直しも進められるようになった。
各国の対応に変化が見られるとともに、コーデックス委員会に「遺伝子組み換え食品」が持ち込まれた。事実上、推進国、米国・カナダの巻き返しである。当初、出された事務局案は、米国・カナダ寄りの「実質的同等性」の考え方に基づいた「表示なし」というものだった。
もし、この事務局案が採択されれば、米国・カナダを除く世界各国が、やっと表示に向けた動きを示してきた段階で、それがひっくり返されてしまう、重大な岐路に立たされたのである。ヨーロッパが中心になって、この事務局案に反対したことから、推進する米国・カナダ、反対するヨーロッパという対立構造が先鋭化し、日本が作業部会を提起し、その結果、幕張でこの作業部会が開かれるようになった。
日本の立場は、基本的に推進国である米国・カナダに近い。それでも、ヨーロッパや各国の消費者代表などが頑張っており、米国・カナダの意見をそのまま認める趨勢にはない。遺伝子組み換え食品の表示や安全性評価で、遺伝子組み換え作物推進国の強引な戦略と対抗するためにも、私たち日本の市民が、コーデックス特別部会に強い監視の目を光らせることが大切である。
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