4月1日に「遺伝子組み換え食品の表示」が正式に始まった。始まったとはいっても、スーパーなどに買物に行った人たちの大半が、従来とほとんど変わっていない、という印象を抱いた。それは「遺伝子組み換えではない」という表示はあっても、「遺伝子組換え」あるいは「遺伝子組換え不分別」という表示が、まったく見当たらないからである。 農水省の調査でも、義務表示となっている豆腐など5661点のうち、「遺伝子組み換えではない」と任意表示されていた商品は3238点(57%)で、その他の2423点は表示なしだったという。すなわち、「組換え」「不分別」という遺伝子組み換え作物が使われている食品は皆無ということになる。これは、遺伝子組み換え作物の輸入実態とかけ離れた表示の実態といえる。この表示の実態を裏づけるように、ハウス食品の「オーザック」から未承認ジャガイモが検出されている。 さらに表示をめぐって新しい問題も発生している。デュポン社が開発した「高オレイン酸ダイズ」の表示をめぐって、厚生労働省が従来の方針を転向させて、「表示なし」に踏み切ろうとしているからだ。 この高オレイン酸ダイズは、脂肪酸の中のオレイン酸を増やした作物で、肉食が増え脂肪酸バランスが崩れがちの、いまの食生活を正すのが目的で開発された。健康食品や病人食として販売が可能で、高血圧や心臓病、肥満などの対策が売り物となっている。 従来、このように特定の成分が増える食品に関しては、「実質的同等性」という安全性評価の基準が適用できないため、表示が義務づけられることになっている。事実、農水省が作った表示の方法でも、「大豆(高オレイン酸・遺伝子組換え)」という表示を行なわなければならないことになっている。 それを厚生労働省が裏切ろうとしている。遺伝子組み換え食品の表示に関しては、最初、農水省がJAS法改正という形で行ない、追いかけて、厚生労働省が食品衛生法改正という形で行なった。その際、厚生労働省は、JAS法に合わせると言明していた。ところが、その約束を裏切ろうとしているのである。 |
そうなると、「大豆(高オレイン酸)」というメリットだけの表示になり、消費者は知る権利を奪われることなる。作られた製品から、遺伝子組み換え大豆を使ったことが検証できないからだ、というのが表示なしの理由である。
さらに問題になっているのが、高オレイン酸ダイズから作られた醤油の表示である。脱脂ダイズから醤油が作られた場合、その表示はどうなるのか。本来、「実質的同等性」ではない組み換え食品の場合、表示は義務づけられることになっている。しかし、このケースでは、厚生労働省だけでなく農水省までもが、表示なしという方針を固めつつある。両省とも約束違反である。
天笠 啓祐 |