EUにおける遺伝子組み換え有機体(GMO)の環境への慎重な放出に関する新指令2001/18/ECについて

キャンペーンニュースの27号(1999年7月23日発行)で、90/220/EECの改正案について報告しましたが、改正後の新指令である2001/18/ECが先ごろ公表されましたので、今回は90/220/EECが2001/18/ECに至った経過をまじえ、多少の改善が見られたこの新指令について報告します。

90/220/EECという遺伝子組み換え有機体の環境への放出に関する審議会指令が最初に発効されたのは1990年の4月23日でした。EU(欧州連合)がまだEC(欧州共同体)だった頃のことです。

ECに加盟していたデンマークでは、ノボノルディスク社が遺伝子組み換えによって酵素(洗剤などに使うため)を開発していたため、組み換え有機物の放出に関する指令がすでに存在しており、EUはデンマークの指令をもとにこの90/220/ECを作成したとのことです。

容器入りの酵母(遺伝子組み換え微生物)に関しては、別に90/219/EECという審議会指令が90/220/EECと同時に発効されています。

指令発効時、EC に加盟していたのは12カ国でしたが、これら遺伝子組み換え体に関する指令に関しては、ECから加盟候補6カ国(オーストリア、フィンランド、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スウェーデン)に対し、各々の国においてこれに値する指令を1995年1月から発効できるよう作成するようにとの勧告がありました。

90/220/EECはもともと酵素など研究室内で作られる遺伝子組み換え体の環境への放出に関して作られた指令ですから、遺伝子の組み換えられた植物を野外で作付けすることや、そのような作物を食品として販売することなどを配慮して作成されたものではありません。

90/220/EEC指令への初めての改正案は、EUによって1994年の4月15日付で提出されています。遺伝子組み換え植物の作付けを配慮した案です。近年中にそのようなことが起こることがわかっていたからでしょう。

遺伝子組み換え作物がアメリカなどからヨーロッパに上陸したのは1996年の秋のことでした。それ以後、ヨーロッパでは消費者団体や環境保護団体を中心として、GMOに対する反対運動が高まり続けています。

GMOに懸念を示すヨーロッパの市民の声を聞き入れ、1997年6月18日付で再び改正案が提出されました。今度は遺伝子組み換え体の商業的販売に関する部分を取り入れた案でした。表示など消費者への情報提供も考慮されています。当時、環境委員を務めていたデンマーク人のリット・ビエルガードがこの改正案作成に関わりました。

その後、1999年6月にルクセンブルグでEU加盟国の環境大臣による理事会が開かれた際、その席で90/220/EEC指令改正に関する重要な決定が行なわれ、「予防原則」、「倫理委員会への諮問」、「市場流通のあらゆる段階における表示の義務化」、「トレーサビリティー(追跡可能システム)の導入」などの項目が改正案に取り入れられることになりました。

欧州議会においてこの改正案に対する議会投票が行なわれたのは、2000年の4月12日のことでしたが、議会での合意は得られず、改正案の改善作業が続けられることになりました。スウェーデン環境省のGMO担当官からの報告によれば、指令改正案の改善にあたり、欧州議会からは101もの提案が提出されたそうです。

さてここで、2001年3月12日付けで承認された新指令である2001/18/ECについて紹介します。

2001/18/ECには旧指令にはなかった14項と4つの新しい付属項目が加えられています。特記すべき部分として、「人間の健康や環境保護のため、予防原則に則り、GMOの環境への慎重な放出を行なう」、「市場流通のすべての段階におけるトレーサビリティーを確立する」、「表示にはGMOが含まれるとはっきり明記する」、「環境放出におけるモニタリング(監視制度)を義務とする」のほか、「科学委員会や倫理委員会との諮問の権利」、「セーフガード措置の適用」、そして、「2001年の7月までにバイオセーフティー議定書を批准すること」などがあります。

開発者や企業の知的所有権を守るためとして機密性の項目が設けられていますが、GMOの作付け地や販売場所、環境に関する危険性評価の書類などは、これの保護下には入らないとされています。承認の有効期間は10年間とされましたので、モンサント社のラウンドアップ耐性GMダイズについては2006年までに再申請を行なわなければならないということになります。

表示に関する指令と、トレーサビリティーに関する指令については、現在、欧州委員会において最終検討が行なわれています。

2001/18/ECがEU 加盟各国において効力を発揮するのは18ヵ月後からです。それまでは、GMO 認可などに関するすべての判断は欧州委員会に委ねられるということになりますが、認可が開始される確率は低いだろうと見られています。

EU加盟国であるデンマーク、フランス、ギリシャ、イタリア、ルクセンブルグ、そしてオーストリアは、欧州委員会に対し、「トレーサビリティー」と「表示」、そして「ライアビリティー(何か起こった場合に誰がどのように責任を取るのか)」に関する問題が解決されない限りは、GMO 認可の凍結を続行すると断言しています。ベルギーとスウェーデンもその考え方を指示する姿勢を見せています。

環境団体のグリンピース・インターナショナルはこの新指令について、「GMOの環境への放出に反対するグリンピースとしてはこの指令に満足しているわけではないが、これにより、EUにおけるGMO認可が更に困難になることは確かだという点で評価するに値する改正である」と、コメントしています。

EUにはGMOに関する山積みの問題がまだまだたくさんあります。企業責任に関するきちんとした法律を制定する必要がありますし、家畜用の飼料に関しても表示の義務付けやトレーサビリティーをすぐにでも確立させなければなりません。なんと言っても、現在、地球で作付けされているGMOの大半は飼料用として販売されているのですから。

それから、認可されていないGMOの混入が発覚した場合にどういった処置を取るのか、花粉による自然交配が起こった場合にはどうするか、など、作業は今後も継続されます。

以上

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