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「環境・持続社会」研究センター
佐久間 智子
WTO(世界貿易機関)は、GATT(関税貿易一般協定)の後身として、1995年に発足しました。GATTはモノ(鉱工業製品と林産物)が対象であり、農業の自由化については論議されませんでした。WTOになって革命的な変化が始まったのです。対象分野が広がり、農産物の自由化が論議され、銀行・保険・水道などのサービスや投資も対象になりました。GATTと比べて法的拘束力が強いことも大きな変化で、日本の基準を国際基準に合わせるために国内措置を整える必要がでてきました。
GMOや生命特許の問題に深く関わる知的所有権もWTOで国際的ルールに統一しようと論議されています。特許・企業秘密・肖像権なども含まれ、特に問題は生命に対する特許を認める考えを一般化してしまったことです。アメリカ的な考えに基づいた商業に対するルールであり、環境などに多大な影響を与えるにも関わらず、このルールをWTOという強力な力で世界各国に押しつけています。
WTOの加盟国は現在146カ国、そのうち7割が途上国です。現在メキシコのカンクンで開かれている閣僚会議は最高決定機関で2年に一度開かれます。そこで健康・人権も含めて日常生活のあらゆる側面について取り決めをつくっているのです。WTO発足時はNGOとのかかわりはなかったのですが、現在は閣僚会議だけはNGOが参加ができます。閣僚会議はコンセンサス方式で表決はしません。閣僚会議は全体会議ですが、その下に政府代表者会議、テーマごとの会議があり、さらにその下に非公式会議があり、すべてはここで決まるという非常に非民主的な組織です。
途上国の政府は、農業、繊維、医療分野の自由化、特に得意な輸出産品の自由化を主張しています。この他のものは、自由化の利益を先進国が握っているからですが、途上国は物ばかり買わされて人々は結局貧しくなっているのが問題です。世界中の小規模農家は、国レベルの貿易には何も利益を得ることはありません。
NGOや自作農の人々は農業をWTO交渉からはずせと訴えて運動しています。水や食料など基礎的なものは自由化すべきでないと考えます。ヨーロッパの国々やアメリカは農業に補助金をつぎ込んでいますが、農業を論議からはずすことを望んでいません。
投資やサービスにしても一部の人々が儲けているにすぎません。自由化による為替差益の利益を得て、世の中を動かしています。個々の人間が豊かと感じるような生活を作り出すためにではなく、一部の人々が儲けるために行われていることが問題です。
NGOの人々は、WTO体制が私たちを豊かにしているのではないことに気づいています。GDPではかる豊かさは私たちが選んだ経済体制ではないのですから。
世界の農業・食料とWTO
農業ジャーナリスト・脱WTO草の根キャンペーン
大野 和興
本来の農業は、
自然の力を人間の食べるものと家畜が食べる物に変えていくことです。それぞれの自然にあったそれぞれの農業があり、それは非常に合理的で自然の力が最高に発揮できるのです。
しかし今、グローバリゼーションのなかで、それぞれの農業、農法が猛烈な勢いで消滅しています。
フィリピンのネグロスでは、今も土地改革と闘っている農業労働者の組合があります。大規模所有の農園主が私兵を雇って、労働者が入ってくると一斉射撃をして排除します。今、土地改革にまったをかける動きが学者などの間で起きています。土地改革を行って零細農民を生み出したら、フィリピン農業は競争ができなくなる、土地改革せずに大農園のまま、そこを株式会社やアグリビジネスに売って、ビジネス的土地所有にかえていくという動きです。その中で一部の農園主が強行に農民にテロを行っているのです。農民たちはこの先どのような農業をしていくかと話し合っているのですが、グローバリゼーションの中でこのようなことが起こっています。
今年、日本は冷害に襲われています。北の地方だけでなく関東にも冷害が及び、93年の冷害以上に深刻な状況です。93年の冷害以降、米の自由化がはじまり、WTOが発足し、野菜の輸入が多くなるなど日本の農業にかぶさってくる圧力はすさまじい状況があります。WTOで農業の自由化が今以上に進められると、つぶれる稲作農家がでてくるでしょう。今、山村にはつぶれた集落があり、平均年齢67歳という村もあります。日本においてもそれぞれの農業、小さな農業は猛烈な勢いで消滅しています。
モンサント社は化学会社としては世界で3位、種子会社としては3位で、種子会社と農薬会社は一体となって生産物を支配しています。また流通販売も握って、圧倒的に世界の食料を握っています。かつては、原料を売る農民と加工する業者は対立していましたから、価格や品質の交渉はオープンでした。しかし今は、すべてを1つの資本グループが行っていますから情報がでてきません。原料、加工、表示など全く分からず、食のブラックボックス化が起こっています。これもグローバリゼーションがもたらした問題です。
松田のマヨネーズはハチミツを使っているため農水省はJAS規格として認めません。コーデックスの基準にハチミツが入っていないから、国際基準に合わないものを作ってはいけないということです。農業は長い歴史の中で、それぞれの地域の人々の志向や風土、気候にあったおいしものを作ってきた。コーデックス基準に入っていないからとえいえいと作ってきた味が否定されてしまうのです。
中国から日本へ大量の野菜が入って来ていますが、果たして中国の農民は幸せになったのでしょうか?確かに量は増えて来ているが価格は下がって来ていて、当初の10分の1くらいになっています。日本の企業が契約栽培していて、過当競争になってきているのです。過剰生産、連作障害もおこっていて、経済的には厳しい状況が出て来ています。日本の品種ですから種子も高く、お金は動くが借金も増えています。アジアの中で農民同士の足の引っ張り合いが始まっています。
また、WTOが原因で、飢餓が広まっています。いま、ヨーロッパでは途上国からの野菜の輸入が急増しています。輸出向けの単一作物を栽培する大農園が出現し、貴重な土地資源が失われ、安全な水もなくなっています。農民はお金はあるが食べ物がない、食料価格が上がり、飢餓が広がっているのです。
ではどうすればいいのでしょうか?農民や消費者が決定権を奪われています。少しでもこれを取り戻すために、お互い横につながって下からの仕組みをつくり、具体的な暮らしづくりを積み上げていくしかないのです。また、グローバリゼーションに対する反対運動に取り組んでいく、個々の自立、個々の確立、自己の決定権を取り戻し、地域に広げていくことが必要です。
生命特許は問題だ
LIFE Japan ポール・マッカーティン
生命は私たちが作ったものではなく、頂いたもの、贈り物です。生命を商品にすることは良くないことです。このことを理解していない人々が全ての物を商品にしてしまう。儲けるために、世界を支配するために、人間、動物、植物、微生物をそして遺伝子にまでも特許をかけています。
アメリカのある人が、周りの友人がエイズにかかっていくのに自分だけはエイズにかからない。調べてもらうとある遺伝子がこわれているためエイズにかからないということがわかったのです。研究者はこの遺伝子を利用してエイズに対する薬を作ろうと、本人には言わずにその遺伝子に特許をかけ、その遺伝子は研究所のものになってしまいました。
また、アメリカでは、先住民の血液をとって調べ、役に立つ遺伝子があればそれにも特許をとって薬をつくろうとしています。このことによりものすごく儲けている会社もあります。アメリカは、この特許制度を全世界に認めさせようとしています。私は今、「生命に特許はいらないキャンペーン」を立ち上げて運動しています。
(以上まとめ 小野 南海子)
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