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日本も世界も、自治体はいま、GMO禁止に向かって進んでいる
遺伝子汚染と人体への影響に関する論文
注目される論文と見解が発表された。前者は種子汚染の深刻さを、後者は花粉による人体汚染の影響を示すものである。予想されていたこととはいえ、取り返しのつかない事態が進行しつつあるように思える。
前者は、2月23日に米国の科学者団体「憂慮する科学者同盟」が発表した論文である。ワシントン・ポスト紙(2004.2.24)などによれば、米国で販売されているトウモロコシ、大豆、ナタネの種子にGM汚染が広がり、3分の2の種子が、最大1%汚染されているという報告書である。これは米国の種子販売業者からサンプルを購入して、分析を依頼した結果判明したものである。
検査は、トウモロコシ、大豆、ナタネの3作物について、従来の品種の種子を各6種類ずつ購入し、2つの検査機関に分析を依頼した。分析方法はPCR法を用いた。その結果、合計36の種子のうち27の種子というから、実に3分の2に汚染が確認された。汚染の割合は0.05〜1%で、花粉によるGM汚染の深刻さが改めて確認される結果となった。
後者が、ノルウェーの遺伝子・環境研究所のウイルス学者が発表した見解である。これはGMトウモロコシが人体に直接影響を及ぼした、というもの。まだ、論文等まとまった形ではなく、見解の発表にとどまっているが、ガーディアン紙(2004.2.27)など多くのメディアに掲載された。
フィリピン・ミンダナオ島にある、遺伝子組み換えトウモロコシを栽培している農場の近くに住む農家の間で発熱や、呼吸器疾患、皮膚障害などが広がり始めた。最初は感染症かと思われたが、村から出て行くと回復するため、環境要因で起きたものと推定され、調査が進められた。
作付けされているトウモロコシはモンサント社のBtコーンで、依頼を受けて調査したのは、ノルウェー遺伝子・環境研究所のウイルス学者テルジェ・トラービック博士。2月23日、同博士の見解が発表された。ミンダナオ島農家の病気は、GMトウモロコシが引き起こしたもので、39人を検査したところ、3種類の抗体で異常増殖が見られた。反応が花粉の飛散時期と重なり、抗体がいずれもBtコーンにかかわることが分かった。
以前、オオカバマダラ蝶への影響が実験で確認されたが、今回は人体への影響であり、より深刻である。いま詳細な調査が継続されている。
自治体でのGM禁止が増える
日本では、自治体でのGM作物栽培禁止の条例や指針作りが進行している。2002年12月につくられた山形県藤島町の条例が先陣を切る役割を果たした。昨年9月には北海道瀬棚町議会が、遺伝子組み換え稲の試験栽培に反対する意見書を採択し、衆議院議長に提出した。それによると、北海道農業研究センターで昨年実施されたGM稲の試験栽培は独善的ともいえるとした上で、1、同センターでのGM稲試験栽培の即刻中止と、2、国民の理解を得られるまで一般圃場での試験を実施しないこと、を求めている。
その後、市町村レベルから都道府県レベルへと拡大した。中でも、北海道、茨城県、岩手県、滋賀県の動きが注目されている。
茨城県は、GM作物の栽培を規制する方針を公開し、そこで野外で栽培を行う場合、近隣の農家の了解を得ることと、他の農作物への交雑防止を求めている。茨城県は水戸納豆でおなじみの大豆栽培県でありながら、他方で、バイオ作物懇話会によってGM大豆が作付けされたり、モンサント社や旧農水省の研究所、筑波大の実験圃場があり、花粉の飛散による汚染が懸念されてきた。今回の指針は、一般圃場での交雑防止が目的であり、日本で最初につくられた自治体でのGM作物栽培規制といってよい。
岩手県は、県内の一般圃場で遺伝子組み換え作物の規制を行う指針を、今年中にも策定することになった。「遺伝子組み換え食用作物の栽培規制に関するガイドライン(仮称)」という名称で、2月9日に開かれた食の安全安心委員会で県が示した。茨城県も岩手県も、GM大豆や稲の栽培が焦点になった県である。
同じようにGM大豆の栽培が焦点になった滋賀県での動きはどうか。昨年8月に同県中主町でGM大豆の栽培が発覚して、刈り取りすき込みが行われた際、同県国松善次知事が記者会見の席上で、「GM作付けを規制する独自の指針をつくる」と表明した。カルタヘナ議定書国内法が施行された後、GM栽培規制の方向が明確になってから指針づくりに取りかかる方針に切り替え、さらに素案をつくり、県民の意見を聞いた後になることから、施行は2005年春の見込みとなった。
北海道では、2005年4月から条例を施行する予定で、条例施行までの過渡期を指針で規制する方針をとっている。それと並行して、2月13日には、道知事あてに「遺伝子組み換え稲に反対」する37万余の署名が提出され、規制強化を求める動きが活発になっている。
他方で国や経済界の反発も強まっている。農水省は規制に懸念を示し介入を強め、北海道農政部に担当者が出向いたり、部トップを農水省に呼んだりしている。2月18日には、日本農学アカデミーなどの研究者が、GM作物栽培規制に反対して、知事あてに要請書を提出するなど、研究者・産業界の反撃も強まった。
規制に対して危機感を抱いている理由は、実験圃場に対する規制を認めると、研究・開発ができなくなるからだ。最終的に、3月5日に指針がまとまり、当初の方針より大幅に後退した内容になってしまった。
対抗して、農水省の研究機関、農業・生物系特定産業技術研究機構の研究者などが、潰しにかかっている。1つの動きが、北海道知事あてに出された同機構・三輪睿太郎名で出された「意見書」(本号6ページ参照)である。その中で、自分たちの研究を阻害しているとして、消費者を激しく非難している。また、独立行政法人・農業生物資源研究所は昨年12月に「遺伝子組み換え研究推進室」(田部井豊室長)を設けて、市民対策の一環としてPA(パブリック・アクセプタンス)を強化する方針を打ち出した。今回は、さらに人員を補強して、自治体などで広がっている栽培規制の動きに対抗することを明らかにした。
米国の郡も禁止へ
世界的にみても、自治体でのGM規制の動きは止まらない。
3月2日、カリフォルニア州メンドシーノ郡(住民8万人)が、米国で初めて住民投票でGM作物・家畜の禁止措置を決定した。市民団体は「メジャー(禁止措置)Hに賛成しよう」キャンペーンで、同キャンペーンのスポークスマン「ローラ・ハンバーグ(おそらくペンネーム)」は、勝利宣言を出した。カリフォルニア州といえば、スタインベックの小説『怒りのブドウ』の舞台であるが、同郡も、ブドウを中心にした農業地帯で、農民によるGM作物反対の声が強かったことが原因だった。モンサント社などの推進企業は、60万ドル以上を費やしてこの措置を潰そうと図ったが、失敗に終わった。住民投票の動きは、同州の他の郡や他の州でも起きており、波紋はさらに広がりそうだ。
英国でも相次いでGMフリーを宣言する自治体が増えている。これは市民団体の地球の友などが推進しているもので、昨年秋には、ブリストル市議会、ブライトン市議会、ホーブ市議会、オックスフォードシャー州議会が、相次いで、GM作物の栽培をさせず、学校給食にGM作物を使用しない等、GMフリー自治体を決議した。その他にも、同様の決議をあげた自治体は、コーンウォール、カンブリア、デボン、ドーセット、ランカシャー、ウォリックシャー、シュロップシャー、サマーセット、南グロスターシャー、湖水地方国立公園、ウェールズ国民議会などである。
また、英国ナショナル・トラスト全国メンバーは年次総会で、トラストの土地ではGM栽培を禁止することを圧倒的多数で可決した。GM支持はわずか15%だった(保留26%)。英国ナショナル・トラストは、60万エーカー以上の土地を保有し、その80%以上で農業を営んでいる。
英国で最も農作物を作り、扱っている生活協同組合もまた、GM作物を扱わないことを決めた。それは生協独自のアンケート調査に基づくもので、GM反対の人が55%を占め、GM作物商用栽培を認めるべきではないという人が78%を占めたためで、生協としてGM作物の栽培を行わず、家畜にGM原料の飼料を使わず、生協ブランドの食品にはGM作物を用いず、生協銀行からGM企業に融資しないことを決めた。
このように、世界の自治体はいま、GM作物禁止に向かって着々と歩みを進めている。
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