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遺伝子組換えナタネが各地の港から侵入
――早急な詳細調査と対策を――
遺伝子組換え情報室 河田昌東

私たちの気がつかない間に遺伝子組換え植物が港から上陸し各地に広がりつつある。昨年6月末に農水省が公表した、茨城県鹿島港周辺の遺伝子組換えナタネの自生を受け、私たちも各地のナタネ輸入港を中心に調査し、予想以上に拡散しつつある実態を確認した。西洋タンポポや西洋カラシナの例を見るまでもなく、放置すればいつしか全国に拡散し、国内の在来植物に除草剤耐性遺伝子や殺虫遺伝子などが入り込む危険がある。私たちの予備調査の結果を報告し関係者の注意を喚起したい。

(1)GMナタネは主にカナダから
日本はナタネ油の原料などとして、年間約200万トンのナタネを輸入している。最大の輸入相手国はカナダで、輸入の85%程度を占める。そのカナダは世界最大の遺伝子組換えナタネ(以下GMナタネ)生産国である。モンサントに特許侵害で訴えられたパーシー・シュマイザーさんは、カナダで非組換えナタネを栽培し、GMナタネによる遺伝子汚染で被害を受けた。
2番目の輸入相手国はオーストラリアだが、まだ本格的なGMナタネの生産は始まっていない。この2カ国で輸入量の99%を占める。従って、輸入されるGMナタネのほとんどはカナダ産である。2003年度はカナダから164万トンが輸入された。それらは、茨城県鹿島港、千葉県千葉港、神奈川県横浜港、静岡県清水港、愛知県名古屋港、三重県四日市港、兵庫県神戸港、岡山県水島港、岡山県宇野港、福岡県博多港で水揚げされている。

(2)港で自生するGMナタネ
港に到着したナタネの多くは、埠頭に設けられたサイロに蓄えられ、近くの製油工場や家畜飼料工場で処理されているが、トラックで港から外部の加工工場にも搬出されている。ナタネの種子は直径が1mm程度で細かく、こうしたさまざまな移動の過程で外にこぼれ落ちる。
私たちは現地の方々にご協力いただき、上記の各ナタネ輸入港周辺とそこから外部に通じる道路、国道、飼料工場や製油工場周辺を調査した。調査期間は農水省が鹿島港の調査結果を公表した直後から今年1月にかけてである。

各港では8月の猛暑が続く暑い時期にもかかわらず、発芽したばかりのものから開花し、中には種子をつけているものまでたくさん観察された。ナタネは冬に成長し早春に開花するのが普通である。この時期にこうした生育状況をもたらすのはこぼれ落ちの結果以外には考えられない。これらを採取し、葉の一部をとってGM遺伝子が含まれているかどうか検査した。

検査方法は、「ラテラル・フロー方式」といって、試験紙上で組換え遺伝子の作る特定のたんぱく質を抗原抗体反応で検出するものである。試験紙はアメリカから輸入した。日本でも、港の税関では未認可のGM作物が輸入されていないかどうかを調べるためにこうした方法がとられている。感度は良く、直径7mmほどの葉片が1枚あれば十分である。

検査の結果、調査した10のナタネ輸入港のうち8カ所で除草剤耐性の西洋ナタネの自生が確認された。自生が見られなかったのは岡山県水島港と宇野港だけである。 
具体的には、モンサントのラウンドアップ耐性(RR:ラウンドアップ・レデイ)が見つかったのは千葉港、横浜港、清水港、名古屋港で、バイエル社の除草剤バスタ耐性(LL:リバテイー・リンク)が見つかったのは博多港、その両方が見つかったのは、鹿島港、四日市港、神戸港である。自生の規模は港によって大きく異なる。多数の自生ナタネが見られたのは鹿島港、千葉港、四日市港、神戸港である。

(3)危惧される国内栽培種や野生種との交配

自生GMナタネはまだ港の埠頭やサイロ、港内道路などの周辺に限られているが、鹿島港ではすでに利根川上流80Kmの取手市にまで自生が広がっている。また、四日市港では港から外部に通じる道路や国道23号線にまで自生している。これはおそらく、港から外部の製油工場や家畜飼料工場へのトラック輸送の際にこぼれた種子によるものと考えられるが、港から種子が何世代もの間に移動した可能性もゼロではなく、さらに詳しい調査が必要である。

四日市では、港の外にある市内の製油工場周辺でGMナタネが自生し開花結実していた。こうした事実を考えれば、港だけでなく、ナタネやその他の輸入穀物が運ばれ加工されている内陸部の製油工場や飼料工場周辺での調査も今後必要である。

サイロからナタネを積んで港から外に出るトラックに鳩がのり、種子がこぼれる交差点などでこぼれ種をついばんでいる光景は珍しくない。土地の多くがアスファルトで覆われ、ナタネにとって生育環境が必ずしも良くない港と違い、いったん外部に出れば自生した植物自体の種子によって次世代へと自生が受け継がれ、国内の西洋カラシナなどの野生種や国内栽培されている西洋ナタネその他の交配可能な近縁種にまで組換え遺伝子が伝播していく。この危険性は強調しすぎることはない。

(4)GM大豆とGMトウモロコシも自生
 GMナタネ自生調査の過程で偶然にもGM大豆とGMトウモロコシの自生も確認された。
横浜港と清水港では害虫抵抗性(モンサントのCry1Ab:MON810)をもつトウモロコシが自生し、草丈は20cm程度であった。自生はしていなかったが、同じ害虫抵抗性のトウモロコシの種子が清水港と愛知県衣浦港の道路脇や側溝、交差点などで見つかった。条件がよければこれらが発芽、成長することになる。

清水港の富士見埠頭ではモンサントのラウンドアップ除草剤耐性大豆が道路脇の草むらに多数かたまって自生していた。GMではなかったが同じ清水港の豊年埠頭の道路脇には多数の大豆が自生していた。別の日の調査ではすっかり除草されていた同じ場所に、多数の大豆種子がこぼれており、こぼれ落ちは日常的に起きていることを示唆している。

これらGMトウモロコシとGM大豆の自生が国内で確認されたのは今回が初めてである。大豆やトウモロコシの輸入港とナタネ輸入港は必ずしも同じではなく、清水港で3種類が見つかったのは偶然である。国内の大豆やトウモロコシの輸入港を改めて調査する必要がある。

GMトウモロコシは交配可能な在来野生種はないが、内陸部に広がれば各地の栽培トウモロコシと交配する危険性はある。トウモロコシの原産国メキシコでは規制が遅れ、表示制度も無いことから、食用や家畜飼料としてアメリカから輸入されるGMトウモロコシによるGM汚染が急速にすすんで野生種や在来種の約10%がGMに汚染し、GMトウモロコシの栽培が禁止された今でもすでに原状回復が困難な状況にある。
大豆は自家受粉性だが、近隣にあれば栽培種との交配もゼロではなく、また国立環境研究所の研究によれば野生のつる豆と開花期が同じく交配も可能である。こうしたことを考えれば、自然界へのGM遺伝子拡散のリスクも無視できない。

(5)手遅れになる前に対策を
 メキシコの例でもわかるとおり、国内にGM植物の自生がひろがれば取り返しがつかない。特に有機農業への影響は計り知れない。また、全国で展開されている「菜の花街道」や「ナタネ油」生産の現場にGMナタネが入り込む危険もある。

遺伝子組換え食品は食べなくても、身の回りに組換え植物が蔓延すれば、知らずに食べるチャンスも増え、アレルギーなどの心配も起こる。

国内での商業栽培の反対はもちろんだが、港を通じて密かに侵入し、気がついたら全国の野山にGM植物が広がっていた、という事態はなんとしても避けなければならない。

GM植物は単に除草剤耐性遺伝子だけを持つのではない。その発現のために何種類もの異種生物の遺伝子の断片をつなぎ合わせたモザイクであり、自然界に広がれば予期しない影響もある。また、自生が広がりそれが既成事実となれば商業栽培への道につながるかもしれない。国内における非GMとGMとの共存、などという無理な意見も出てくるかも知れない。

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