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遺伝子組換え大豆の安全性は確保されているか
――日本の安全審査にみる問題点――

遺伝子組換え情報室 河田昌東

遺伝子組換え食品はすでに広く利用されている。しかし、その安全性を保障する国のシステムは極めて科学性に乏しく、消費者の安全を守るにはほど遠い状況である。これまで、安全性の根拠とされてきた「実質的同等性」は第二世代遺伝子組換え(例えば、花粉症緩和米など)の登場で事実上破棄される運命にある。ここでは国の安全審査の問題点を指摘し、今後の議論に供したい。

(1) 身代わり試料での分析
モンサント社は、除草剤ラウンドアップ耐性大豆の安全審査に当たって提出したデータで、成分分析やラットの毒性試験に使った除草剤耐性タンパク質CP4EPSPSのサンプルが、組換え大豆からとったものではなく、大腸菌で作ったものを使った。遺伝子が同じだからよい、というのがその根拠だが、この主張は科学的には正しくない。高等生物と大腸菌などバクテリアでは遺伝子の解読機構が若干ちがい、同じ遺伝子を使っても異なるアミノ酸配列のタンパク質を作る可能性がある。また、出来たタンパク質が後から化学修飾され、本来のものとは違う構造になることもある。従って、こうした身代わりタンパク質を使った場合には、それが遺伝子の配列どおりかどうか厳密に分析する必要がある。


(2) 分析は一部分、あとは推定
ところが、モンサント社は大腸菌で作ったラウンドアップ耐性タンパク質(遺伝子からの推定では455個のアミノ酸からなる)のアミノ酸配列のうち、端からたった15個だけの分析をおこない、あとはDNAからの推定でよしとしている。政府の審査会もこうした身代わりタンパク質の部分構造決定を認めている。このケースが前例となり、現在認可されているすべての遺伝子組換え作物の組換えタンパク質の構造決定は、端から10〜15個しか決定されていない。消費者は結局のところ一体何を食べているのか不明なのである。アミノ酸配列がDNAどおりでなければ、未知のアレルギー発生の危険性などが生ずる。


(3) 増大する残留農薬の危険性
除草剤耐性の利用で、作物体内には残留除草剤濃度が上がる。そうした実験の結果、モンサント社は政府に対しラウンドアップ残留濃度の引き上げを要請する、という本末転倒の主張をした。アメリカはラウンドアップ耐性大豆の認可にあたり、家畜飼料中の残留濃度を15ppmから200ppmに引き上げた。同時にアメリカ政府はアメリカから大豆を輸入する各国に対し、残留濃度を20ppmに引き上げるように迫った。それに伴い日本はそれまでの6ppmから20ppmになった。英国やオーストラリアはそれまで0.1ppmの基準を20ppmに引き上げた。たかが1企業の要請が世界の安全基準を変える力を持ったのである。ラウンドアップは世界で最もたくさん使われている除草剤である。それに伴い、非ホジキン性白血病が増加した疑いがもたれている。ラウンドアップ多用に伴い、アメリカではラウンドアップ耐性雑草が登場し、さらに除草剤を撒く、という悪循環が始まっている。当初、1回で良いとされたラウンドアップ散布は現在2〜3回散布が当たり前になっている。


(4) 度重なる組換えDNA構造の改定
モンサント社は当初(1992年)、ラウンドアップ耐性遺伝子(CP4EPSPS)は大豆の中に一個しか入っておらず、必要なタンパク質を正確に作っている、と主張した。ところが、2000年になって、この遺伝子の断片が別の場所に2か所挿入されていることを公表した。さらに、2001年にはベルギーの研究者らの指摘により、さらに新たな断片が結合していることを認めた。このように、あらかじめラフなデータで認可をとり、後で小出しに訂正するという手法は安全審査の根幹を揺るがしかねない。こうしたラフな安全審査の積み重ねの結果、現在は初めから組換え遺伝子が複数個導入されたり、その断片が挿入されていても認可されることが普通になっている。


(5) 宿主の他の遺伝子に与える影響
本来大豆が持たないバクテリアの遺伝子を導入した結果、宿主(大豆)本来の遺伝子の発現には大きな影響を与える。このことは、検出技術の進歩により遺伝子組換えに伴う当然の現象であることが最近明らかになっている。分子レベルではすでに実質的同等性の主張は成り立たないことがはっきりしているのである。しかし、安全審査では、アミノ酸含量やタンパク質含量、繊維質など大まかな成分の変動がなければ良い、とする前時代的な基準がまかり通っている。組換え遺伝子が与える他の遺伝子への影響を無視しては安全性を確保できない。


(6) 環境に与える影響
遺伝子組換え作物を栽培すると、土壌にフザリウム(Fusarium sp.)という特殊なカビが増殖することがわかっている。フザリウムはその種によって様々なカビ毒をつくり、危険な存在である。フザリウムで汚染したトウモロコシで豚が不妊になった例がアメリカで報告されている。また、このカビによる感染で、ラウンドアップ耐性大豆が水不足に際して突然死することもわかっている。こうした意図しない環境への影響は人間の健康にも無関係ではない。基礎研究を無視し、ビジネス優先の組換え技術を放置すれば、その影響は結局人間に帰ってくることを忘れてはならない。

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